「第1話プロローグ〜殻の外へ〜」
湿ったようで生ぬるい感覚に襲われる部屋。しかし、周りはこれを「牢獄」と呼び、私を「化け者」と呼んだ。その意味は分からない。
分かりたくもないし、興味もあまり無いのだが取りあえず自分を罵っている事ぐらいは分かる。しかしまた、それが何故か分からない。
私はこの場所から動く事は少ない。動いても何も変わらぬ部屋だからというのもあるが、まず私にはそれが出来ない状態が日々続いて
いるからだ。私の両手足には枷があって、いつのまにか自分から動く事を忘れさせた。私が動く時は、食事か父親のしつけかトイレの時のみ。
しかし、何かが私に起こって一気に世界は変わった。とても悲しい事、恨めしい事、叫びたい事があったような気がするが覚えていない。
うっすらと写った人物は、今まで自分が付き合ってきた人たちと違い、優しく、親切で、私を「君」と呼ぶ。
気づいたら白を基準とした部屋に、私とその人しかいない。「神様?」と言ったのを覚えている。しかし、ふと出た言葉だったので、実は意味を
知らない。その金髪とやたらと白い肌をした男は、今まで見たことの無いような顔をした。何やら、良い意味でふいをつかれて、唇は上に
上がり、少し声を発しながら手で軽く押さえている。その後、それは「笑う」という事が判明するがその時は奇怪な動きにしかとれなかった。
「神様じゃないよ。今日から訳あって君は私の娘だ。」そう言い放つ男は、自分を紹介しているようだが私にはまたよく理解が出来なかった。
それに気がついたのか、男は自分を指して「ラルト、ラルト・ミッシェルだ。」とジェスチャーしている。とにかく、「ラルト」なのだから、「ラルト」
なのだろう。そう思い、頷いて見せた。彼はホッとしたような顔をし、今度は目をつむってブツブツ言っている。その後、それは「悩む」という
行為だと知る。すると、いきなりラルトは私を指差し、「マイラ、マイラ・グドゥネス!どうだ!?」と嬉しそうに語っている。「どうだ!?」と言われ
ても、どう答えるべきか知らぬ私は、意味も分からず頷いた。記憶は無くても、他人に逆らわないすべは覚えているものだ。
そう考えていると、いつのまにかラルトは私の手を優しく包みこみ、「マイラ・・・行こうか?」と言った。そのラルトの顔が、この世の者とは
思えないような顔だった事に、その時気づき、私はハッとした。そして、又思わず「はい」と意味も分からないのに答えてしまった。
それから時は流れ・・・・